東洋医学の「心」とは?不調になったとき、どんな症状がある?
こんにちは、鍼灸師のトミナガです!
東洋医学での「心」とは、何か?どういう働きをするのか?
また最後の方では、「心」が不調になったときにはどういう症状があらわれるのか?というところも解説していきます!
西洋医学の心臓との違いも少し触れます(^^)
東洋医学の「心」とは?
「心」と聞いても、精神的なもの?とか、心臓のこと?と思われるかもですが、
東洋医学での「心」は心臓とは少し違う動きをしています。
まず、西洋医学での心臓の働きは・・・
・ポンプ機能
身体中に血液を送る
→血液の循環によって、あらゆる組織へ酸素の供給・二酸化酸素や老廃物の除去がされる
心臓の血液循環についてはさらに細かく分けられますが、ここでは大まかにしておきます(笑)
「心」の働き
「心」は、自然界に置き換えると火(太陽)です。
火(太陽)とされる理由としては・・・
太陽があらゆる生物にとってのエネルギー源でもあり、失くなってしまうとすべての生命活動が停止してしまう存在であるように、
「心」も同じように身体全体のエネルギー源であり、その機能が止まってしまうと臓腑の活動も止まってしまうからですね!
また、「心」は全身の陽気でもあるとされていて、全身を温めています。
そんな「心」の生理作用は2つです!
・主血(血を主る)
・神志を主る(精神活動)
主血(血を主る)は、心臓と似ているところですが、
神志を主る(精神活動)は、西洋医学でいうところの脳ですね!
ちなみに東洋医学では、
「神」は”精神活動や思考すること”を意味していて、
「志」の”心に集中すること”という意味を合わせて、
「神志」となります(^^)
(宗教的なものと関係はありませんよ~)
また、この「心」の生理作用を動かしていくために重要な要素があります。
それが「心気・心陽・心血・心陰」の4つの要素です。
「心」の要素は、心気・心陽・心血・心陰に分けられる
それぞれの動きは以下です!
心気
→血を全身に巡らせる先導的な役目
心陽
→「心」が身体中に血を巡らせることで身体を温める作用のこと(温煦作用)
心血
→精神活動を行う上で、必要な栄養分となる血。
心陰
→精神が過剰に興奮しないように落ち着かせる作用。
※「心」は陽の気が強く、活動的過ぎて熱っぽくなりやすい傾向があるので、心陰の鎮静作用があることでバランスを保つことが出来ます。
この4つの要素がバランスよく動くからこそ、「心」の作用が円滑に働いていけます。
これらの動きに異常が現れることで、
心気虚・心陽虚・心血虚・心陰虚などの状態となり、あらゆる不調を呈するようになります。
(詳しくは後ほど解説します!)
主血(血を主る)
血を送り出す機能のことで、心気と心陽が深く関わっています。
これは心臓と同じような働きで、心気が旺盛であれば全身に血が循環し、組織・器官を養います。
もし「心」に栄養が行き渡らなかったり、体内に熱が発生したりと、
「心」の機能が不調となった場合・・・
血がうまく送り出せなくなるので、動悸・不整脈といった症状が起こります。
神志を主る
「心」は生命活動を維持する、また精神活動・意識・集中して思考するなどの活動を担っていて、
これには心血と心陰が深く関わっています。
「心血注いで制作した!」と使われたりもしますが、
まさにそのまんまの意味で、心血(と心陰)を使って思考・活動しているんですよね(^^)
細かくいうと、記憶・学習能力・判断力・言語機能・睡眠・意識状態といったものになりますが、
西洋医学的にいうと、大脳機能や中枢神経系の機能と深く関係しているということですね!
なので、「心」の機能に何らかの不調が起こると、不眠や忘れっぽいなどの影響が出ます。
※ちなみにですが、「肝」も精神的なものと関係していますが、どちらかというと感情、情緒的なものが「肝」になります。
「心」と関連が深いもの
東洋医学には二千年以上の歴史があるので、数えきれないほどの治療家たちの経験・臨床結果があります。
そこから生み出されたものが、五行色体表です。
それは、自然界から人体の部位や働き、病気の原因・病理・病証などを五臓(肝・心・脾・肺・腎)にそれぞれ分類したものです。
その五行色体表で、「心」に分類されているものが、以下です(^^)
※今回は太字になっているところだけを解説していきます。
五臓 | 五腑 | 五行 | 五季 | 五竅 | 五主 | 五液 | 五華 | 五精 | 五悪 | 五労 | 五色 | 五志 | 五動 | 五病 | 五香 | 五味 | 五声 | 五穀 | 五畜 | 五菜 | 五果 |
心 | 小腸 | 火 | 春 | 舌 | 脈 | 汗 | 顔面 | 神 | 熱 | 視 | 赤 | 喜 | 憂 | 噫 | 焦 | 苦 | 笑 | 忝 | 羊 | ※薤 | 杏 |
※ラッキョウ
「心」と関連が深い身体の部位
「心」と関連が深い身体の部位は、「舌・脈・汗・顔面」。
「心」の不調が現れやすい部位ということですね!
①舌・顔面
舌・顔面の色つやは血液の循環の充足度を表しているので、主血機能の状態がよくわかります。
また、舌には”味覚の識別・発音・発語”という機能がありますが、それは「心」の作用の「神志」との関りが深いです。
例えば、ストレス(精神的な不調)で味覚障害が起こる、失声症になる、といったことですね。
他にも、何かしらの原因で「心」が不調になると・・・
顔面蒼白、顔面紅潮、舌が白っぽくなる、舌の先だけ赤い、などが舌や顔面に反映されたり、
舌が制御できない、舌がこわばる、発音がうまくできない(構音障害)などの症状が現れます。
②汗
東洋医学では、汗は血脈の外を通っている津液が毛穴(腠理ともいいます)から排出されたものです。
単純に、毛穴から汗が出るといったかんじですね!
普段の生活で使うような、汗の意味とほとんど同じように思いますが、
少し違うのは・・・
血脈の外を通る津液が不足したときには、血脈中の津液がその不足を補うということです。
つまり、血を主っている「心」とは関連が深いということです。
汗の役割としては・・・「心」の陽気が身体を温め過ぎた場合、余分な熱を汗で放散させることです。
なので、もし「心」に何らかの不調があるとき、汗の異常として現れやすいですね。
例えば、「心」の熱が上がる過ぎた時は多汗になったり、寝汗をかくようになったりです。
③脈
脈はそのまま血脈のことで、血の通り道です。
言うまでもなく「心」との関連が深く、「心」に不調があると血脈にも異常が起こります。
例えば、「心」に不調が起こって血がうまく送り出されなくなると、不整脈が起こりやすくなります。
「心」と関連が深い精神・感情
先ほども少し触れましたが・・・
「心」とかかわりが深い精神的な活動は、
「記憶・学習能力・判断力・言語機能・睡眠・意識状態」といった、大脳機能や中枢神経系の機能の部分です。
東洋医学では、そのことを「神」といいます。
「心」を適度に調節する感情は、喜。
①神
他の五臓でも、それぞれに意識や精神を主っているものがあるものの、
中でも「心」の神は一番上位の存在に位置していて、他の五臓が担っている「魂・意・魄・志」といった意識・精神を統率、制御しています。
なので、「心」の不調が著しくなると、全体的に意識・精神状態が不安定となり、
精神的な異常、強い倦怠感、狂ったようになる(狂躁)、幻聴・幻臭・幻覚などの症状が起こりやすくなります。
②喜
喜びといっても、
・リラックス的な喜び
・興奮的な喜び
と、大きく分けると2種類ありますよね(^^)
・リラックス的な喜び
リラックス的な喜びは、適度に緊張をほぐし、気の働きを緩ませることができるので、
「心」の血を送り出す機能に対して、良い作用をもたらします。
しかし、過度にリラックスしてしまうと気の働きが緩みすぎてしまうので、逆に動悸や不整脈といった症状が起こります。
西洋医学的には、リラックスをして動機や不整脈が起こるとはあまり考えられてませんが、
東洋医学的には、動悸・不整脈の要因の一つでもあるので、参考にしていただけると幸いです(^^)
・興奮的な喜び
興奮的な喜びは、気の働きが弱くなっているところを活性化させることができるので、
リラックス的な喜びとは逆の意味で、「心」の血を送りだす機能に良い作用をもたらします。
しかし、過度な喜びは「心」の機能が過剰になってしまい、動悸・不整脈の原因になります。
急激に興奮的な喜びを感じると、失神することも(汗)
(アイドルのライブで興奮しすぎて失神したなど)
「心」が不調になったときに好む味
「心」が不調になったときに欲しくなる味は、苦。
苦味には、熱を取り去り降下させる、という作用があります。
「心」は陽気が旺盛で、過剰な熱を取り除かないと身体に熱証(ほてり、口が渇くなど)を招くので、苦みが必要になるんですね。
しかし、苦みを摂りすぎてしまうと・・・
逆に、陽気を損なって「心」の作用に影響を及ぼしてしまいます。
飲食物で言うと、コーヒー、チョコレート、ゴーヤなどが有名ですね!
確かに、コーヒーを飲むとリラックスできますが、飲みすぎると逆に冷えてきますよね(私はそうなります笑)
「心」が不調になったときの症状(病証)は?
東洋医学において、「心」にまつわる病証でよくあるのは・・・
・心気虚
・心陽虚
・心血虚
・心陰虚
以上のものです(^^)
心気虚
「心」の機能が減退したもので、全身的に気が足りていない(気虚)状態です。
つまり、「心」が正常に機能しないことで、血が全身に巡らなくなるので、全身の機能が弱まってしまいます。
・症状
「心」の機能が低下、全身の機能が低下することで引き起こされる症状です。
動悸、汗をかく(自汗)、胸が苦しい、呼吸が短い、顔色が白い、倦怠感など。
呼吸する力(宗気)が弱くなるので、息切れなどの症状も起こります。
またその上で、疲労・過労・運動によって気を消耗してしまうと悪化します。
・原因
慢性病によるもの、急性病によって重体なとき、老化によるもの、過剰に考えすぎているときに、
「心」の気が損なわれ、全身に血を送り出せなくなることで起こります。
心陽虚
心気虚がさらに進行したことで温める作用(温煦作用)が低下し、体温や活動量が下がった状態です。
心気虚よりも気虚の症状は強く、同時に血・津液の動きも悪くなるため、血瘀・痰温といった状態になることも。
・症状
心気虚の症状にプラスして、冷え症(四肢冷感)、全身倦怠感。
精神疲労、無力感などが呈することもあります。
・原因
心気虚が長期間続いたり、慢性疾患や高齢によるもの。
心血虚
「心」の血が不足している状態です。
これも、全身に血が送られなくなるので、心気虚と同じような症状もみられます。
・症状
血の不足によって引き起こされるもので、
顔面蒼白、めまい、唇の色が薄い、動悸、不眠、忘れっぽい、夢を多く見るなど。
あまりにも血が少なくなってしまうと、神志を養えなくなり、てんかんが起こることもあります。
・原因
事件・事故などによる大量出血、栄養の摂取不足によるもの、深く考えすぎる(心血の使い過ぎ)、体内で熱が発生し陰血を消耗したことによるもの、出産後の出血など。
心陰虚
心陰が少なくなったことで「心」の陽気を抑えられなくなり熱が発生(虚熱)、
また「心」の働きが過剰に高ぶってしまう状態です。
(つまり交感神経が亢進した状態ですね)
・症状
動悸、不眠、夢が多い、忘れっぽい
ほてる、手のひらや足の裏が熱くなる、
寝汗、頬が赤い、口やのどが渇くなど。
・原因
七情内傷(喜・怒・憂・悲・思・恐・驚)によるものや、慢性疾患によって影響を受けます。
「心」の不調として現れる症状には、精神的なものが多いです(^^;
特に、深く考えすぎたりすると、「心」の機能が低下してしまいがちです。
現代がストレス社会だからなのか・・・
ついつい自分を責めてしまったり、自己嫌悪に陥ってしまうこともありますよね(汗)
自分の心の内面を見つめることで、自己嫌悪や自己否定を克服することもできますが、
その前段階ですと、まずは「考えすぎないこと」が処置として大切になるのかもしれませんね。
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