東洋医学の「肺」とは?不調になったとき、どんな症状がある?
こんにちは、鍼灸師のトミナガです!
東洋医学での「肺」とは何か?どういう働きをするのか?
真っ先に思い出すのは、西洋医学の肺だと思います(^^)
しかし、東洋医学での「肺」は呼吸にまつわるものだけではなく、免疫機能のような重要な役割もしています!
「肺」がそんな重要な役割をしているイメージがないと思いますが・・・
東洋医学では、風邪の症状や皮膚に関するものは「肺」と大きく関係するので、
風邪をひきやすかったり、皮膚症状が出やすい方は、「肺」の機能を高めるといいですよ~(^^)
東洋医学の「肺」とは?
まず、西洋医学の肺の働きは以下です。
・酸素と二酸化炭素の交換
口や鼻から取り込まれた酸素を肺(肺胞)に充満させて、心臓から送られてきた二酸化炭素の多い血液を、酸素が多い二酸化炭素が放出された血液に変換させる。
以上が、西洋医学においての肺の役割になります(^^)
「肺」の働き
「肺」は、自然界に置き換えると金(雲)です。
金は金鉱山とも表せますが、なぜ雲か?というと、
金も雲もどちらも柔らかく形が変わりやすい性質が共通しているからです(^^)
働きとしては、雲の方が近いですね!
雲とされる理由としては・・・
雲が紫外線などの有害物質から地上を守っているように、
「肺」も外界から人体を守る役割をしているからですね!
西洋医学での肺とは違う働きをしているので、「?」となってしまうかもしれませんが(笑)
東洋医学においての「肺」の生理作用は2つです!
・宣発、粛降
・主気(気を主る)
以上が、「肺」の機能になります(^^)
宣発・粛降
宣発は、広く行きわたらせて外へ発散させるという意味で、
粛降は、清らかで静かに下降するという意味です!
①宣発
広く行きわたらせて外へ発散させるという意味そのままで、気や津液を上へ外へと輸布させる作用があります。
これには大きく分けて2つの特徴があります。
①体内の濁気(病因となる気)を体外へと排出する
呼気(吐く息)によって、体内の濁気を身体の外へ出します。
※不調になると、咳が出る、息を吐ききれないという症状が起こります。
②津液と衛気(身体を守る気)を体表まで輸送する
津液と衛気を体表まで送るとともに、鼻の通りを良くします。
津液は体表を潤し、衛気は発汗の調節や、病原体から身体を守る役割(免疫機能)をしています。
※不調になると、発汗の異常、鼻づまり、風邪を引きやすい、という症状が起こります。
②粛降
粛降は、清らかで静かに下降するという意味の通り、気や津液を下へ輸布させる作用があります。
これには大きく分けると3つの特徴があります。
①気道を清潔に保って、清気(きれいな空気)を身体に入れる
空気を吸うことは、気を作り出すことにも関係しています。
気が作られる流れとしては、
「脾」で吸収された水穀の精微(栄養)と、この粛降によって取り込まれた清気と合わさることで、宗気(胸の中で働く気)になります。
※不調になると、宗気が不十分となり息切れや喘息などの症状が起こります。
②気の働きを下降させる
全身の気を下へ内へと降ろす役割をしていて、その働きで「胃」や「大腸」の生理作用を補助しています。
※不調になると、咳が出る、便秘、深く吸い込むことができない、などの症状が起こります。
③津液を「腎」まで輸送する
粛降は水分代謝にも関わりがあって、「脾」から送られてきた津液を全身に巡らせ、「腎」まで輸送します。
※この働きが不調になると水分代謝に影響があり、浮腫、痰が多い、小便が少ない、などの症状が起こります。
主気(気を主る)
宣発と粛降の作用が協調することで、
宗気が作り出され、衛気が体表に出て身体を外界の刺激から守ります。
「肺」が多くの気の働きや調節に関わっていて、その機能のことを主気といいます(^^)
「肺」の2つの特徴
・華蓋(かがい)
華蓋とは、天皇の車につけた傘のことで、臓腑の中でも一番上にあることを意味します。
外界の刺激や細菌などから侵入を防いで臓腑を守る役割を例えたものです。
・嬌臓(きょうぞう)
嬌臓とは、弱弱しい臓腑を意味していて、
「肺」は他の臓腑に比べると機能の不調を起こしやすいことを例えたものです。
「肺」と関連が深いもの
東洋医学には二千年以上の歴史があるので、数えきれないほどの治療家たちの経験・臨床結果があります。
そこから生み出されたものが、五行色体表です。
それは、自然界から人体の部位や働き、病気の原因・病理・病証などを五臓(肝・心・脾・肺・腎)にそれぞれ分類したものです。
その五行色体表で、「心」に分類されているものが、以下です(^^)
※今回は太字になっているところだけを解説していきます。
五臓 | 五腑 | 五行 | 五季 | 五竅 | 五主 | 五液 | 五華 | 五精 | 五悪 | 五労 | 五色 | 五志 | 五動 | 五病 | 五香 | 五味 | 五声 | 五穀 | 五畜 | 五菜 | 五果 |
肺 | 大腸 | 金 | 秋 | 鼻 | 皮 | ※涕 | 体毛 | 魄 | 燥 | 臥 | 白 | 憂 | 咳 | 咳 | ※腥 | 辛 | 泣 | 稲 | 馬 | 葱 | 桃 |
※涕(てい):はなみず
※腥(なまぐさい)
「肺」と関連の深い身体の部位
「肺」と関連が深い身体の部位は「鼻・涕・皮・体毛」。
「肺」が弱っているときに反応が現れやすい部位ということですね(^^)
①鼻・涕
鼻は清気と濁気の出入り口で、涕はそこを潤しています。
また鼻は「肺」と外界へとつなぐ器官でもあります。
なので、「肺」とは密接な関係にあり、「肺」の機能が正常であれば、呼吸や嗅覚は正常に保てます。
もし「肺」が外邪などによって弱ってくると・・・
鼻が詰まる、鼻水が出る、などの症状が起こり、嗅覚や呼吸にも影響を及ぼします。
②皮・体毛
皮と体毛は合わせて皮毛とも呼ばれ、皮膚・毛穴・体毛を含んだものです(^^)
皮膚・毛穴・体毛は、衛気と津液によって温めたり潤されていて、細菌やウイルスの侵入を防ぐ役割もしています。
また、衛気は皮膚の収縮・弛緩を制御して、汗を正常に分泌させ、体温を調節しています。
皮膚の収縮・弛緩のことを腠理の開闔(そうりのかいごう)ともいいます!
「肺」がその衛気と津液を体表に輸布しているので、「肺」が弱ってくると皮毛に影響が出ます。
たとえば、風邪を引きやくなる、皮ふが乾燥する、かゆい、などの症状が起こります。
「肺」と関連が深い精神・感情
「肺」と関連が深い精神は、魄。
「肺」と関連が深い感情は、憂(悲)。
①魄
魄とは、肉体的な生命を主る活力で、肉体を形つくっているものです。
感覚・運動・情志などの本能的な精神活動も主っています。
なので「肺」が弱ると、全身に気が行き渡らなくなるので、体つきは弱弱しくなり、様々な感覚異常を起こしやすくなります。
②憂(悲)
憂いたり、悲しんだりすると、気が停滞・消耗するなどの異常が生じます。
気の異常は「肺」にも大きく関係するので、「肺」にも影響を及ぼします。
逆に、何らかの影響で「肺」の気が不足しても、憂いたり、悲しんだりしやすくなります。
「肺」が不調になったときに好む味
「肺」が不調になったときに欲しくなる味は、辛。
辛味には、発散・気の流れをよくする、などの作用があります(^^)
「肺」には引き締める作用があり、閉じるという方向に働きますが、閉じすぎてしまうと、全身に陽気が循環しなくなってしまいます。
そのときに辛味を摂れば、気の循環や発散をよくすることができます!
しかし、辛味を摂りすぎてしまうと・・・
気や津液の発散・流れが過剰になってしまい、消耗しすぎたり、熱を帯びてしまうようになります。
「肺」が不調になったときの症状(病証)は?
東洋医学において、「脾」にまつわる病証でよくあるのは・・・
・肺気虚
・肺陰虚
・風寒犯肺(ふうかんはんはい)
・風熱犯肺(ふうねつはんはい)
・痰湿阻肺(たんしつそはい)
以上のものです(^^)
肺気虚
「肺」の機能が減退したもので、宗気・衛気の不足と津液の輸布が失調した状態です。
・症状
肺の気が不足することで、
力のない咳や喘息(宣発・粛降の不調)、息切れ(宗気不足)、風邪を引きやすい(衛気不足)などを引き起こします。
全体的に気が不足すると、
力が出ずだるい、汗をかく、などの症状が現れます。
「肺」の機能でもある水分代謝などの不調は、
津液を輸布できないことで、水っぽい鼻水・痰が出ます。
他にも、風を嫌う、慢性気管支炎、慢性気管支喘息、肺気腫、声が出ないなど。
動くと悪化しやすいです。
・原因
慢性的な呼吸器疾患によるもの、
先天的な虚弱体質によるもの、
脾気虚によって水穀の精微(栄養)で「肺」を養えないとき。
肺陰虚
「肺」に送られる血や津液が不足して熱(虚熱)が発生し、熱っぽく乾燥した状態になります。
・症状
乾いた咳で痰が少ない症状から、
虚熱が発生すると、寝汗、のぼせ、ほてり、口が渇く、頬が赤くなる、などの症状が起こります。
また、虚熱が発生した状態だと、痰は黄色っぽくなります。
・原因
慢性的な咳、発熱で起こりやすいです。
風寒犯肺(ふうかんはんはい)
クーラーや外気など冷たい風や身体を冷やしすぎ(風寒)などによって、「肺」の機能に影響を及ぼしたときに起こります。
・症状
風寒によって・・・
体表に流れる衛気との邪正相争(邪気と戦う)によって、悪寒や発熱。
気血の流れが悪くなると、頭痛や後頚部痛。
皮毛・口・鼻から侵入し「肺」の機能に影響があると、咳、鼻が詰まる、鼻水が出る、喉の違和感。
・原因
クーラーや外気の冷たい風、身体を冷やしすぎたとき、日常生活の不摂生などで衛気が不足しているときなど。
風熱犯肺(ふうねつはんはい)
暖房や夏場の暑さ(風熱)などで、「肺」の機能に影響を及ぼしたときに起こります。
風寒犯肺よりも、炎症性の症状が悪化した状態です。
・症状
「肺」の機能が低下して、咳が出る。
熱邪が「肺」を熱することで津液にも熱が加わり、粘っこい痰が出る、軽く喉が渇く、咽頭痛。
熱が頭部まで上がってくると、頭痛。
皮毛・口・鼻から熱邪が侵入し「肺」の機能に影響があると、鼻が詰まる、黄色の鼻水。
熱邪が体表に入り込み邪正相争(邪気と戦う)になると、発熱、軽い悪寒、汗が少ない(出ない)。
春季・冬季、季節の変わり目に多い症状です!
・原因
暖房や夏場の暑さ(風熱)など。
痰湿阻肺(たんしつそはい)
「脾」の機能が弱っているときに、水の飲みすぎ、冷たい物の食べ過ぎなどで痰湿になり、その痰湿が「肺」に影響を及ぼしたときに起こります。
・症状
痰湿が「肺」に留まることで、強い咳が出て、痰が生じる(痰を吐くと、咳が軽減)。
「肺」の機能が低下することで、鼻が詰まる、鼻水が出る。
「脾」の機能も低下していることで、食欲不振。
・原因
何らかの影響で「脾」の機能(運化作用)が低下し、「肺」に痰湿が停留したことで起こります。
東洋医学において「肺」は、呼吸だけでなく、体表を潤したり、衛気を全体に巡らせることで免疫機能のような役割もしています。
なので一般的に言われるような、風邪などは「肺」の機能が低下しているときに起きます。
また、「脾」の機能が低下し「肺」に影響が及ぼされたことで、痰がよく出るようになることもあります。
こんな感じで、一つ一つの臓が影響を与え合っているので、一つの臓だけが原因であることはあまりありません(^^;
これは西洋医学にはない視点なので、もし原因がわからないなどの症状がある場合、東洋医学的な視点を取り入れて原因を追究してみてください(^^)
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