東洋医学の「気」とは?一体どういうものなのか?
こんにちは、鍼灸師のトミナガです!
「気」のことは誰しもが一度は聞いたことがあると思いますが、何か怪しいイメージが定着してしまっていますよね(汗)
悪い人たちが目に見えないことをいいことに、「気」がどうとか言って、たくさんの人を騙してきたからなんでしょうけど・・・(^^;笑
しかし、2000年前から東洋医学では「気」を考慮した治療法が確立され、日本では1500年前から多くの人の役に立ってきました。
なので、「気」を信じる・信じないは抜きにしても、東洋医学において無視できない存在です。
「気」とは?
「気」とは、人の身体を構成する生命活動を維持するための、めちゃくちゃ細かい物質です。
最近では、素粒子なのでは?という声も聞きますね(^^)
西洋医学でいうところのエネルギーに値しますが、
東洋医学ではもう少し広い役割を持つので、少し違うところもあります。
「気」は何から作られる?
東洋医学での「脾」と「胃」が飲食物を消化・吸収して、そこから「気」が作られます!
また、親から引き継いだ”先天の精”からも気(原気)が作られて、各臓腑の働きを発揮させる原動力となります(^^)
「気」の分類
実は「気」といっても、たくさんの種類があります。
機能的なものでは、原気・宗気・営気・衛気。
臓腑の働かせるものは、臓腑の気。
それぞれの役割を解説していきますね!
原気
さきほどもチラッと言いましたが、親から受け継がれる”先天の精”から作られるものです。
原気は人体の中でも一番根源的な気でして、
成長や発育を促したり各臓腑の生理活動を動かしたりと、生命活動の原動力となります。
宗気
宗気は飲食物から得られる水穀の精微と、
呼吸から得られる自然の清気(空気)が合わさって作られます。
宗気は胸中に集まって、「心」と「肺」の活動を支える2つの働きをします。
①呼吸を押し出す
宗気は「肺」の呼吸を助けるので、呼吸・発声と大きく関係します。
宗気がしっかりあれば、発語ははっきりしていて声がよく通りますが、
逆に宗気が少ないと、呼吸は浅く、発語ははっきりせず声が低く弱くなります。
②血の運行を促進させる
宗気は「心」の血を推し出すので、心臓の拍動とリズムに大きく関係します。
宗気がしっかりあれば、心拍数も一定で脈拍もゆったりとしますが、
逆に宗気が少ないと、脈のリズムが不安定になったり、微弱になります。
営気
営気も飲食物から得られます!
豊かな栄養を持っていて、血の一部として全身を巡っています。
衛気
衛気は「気」の中でも、活発で動きが速いという性質があり、
皮膚・肌肉(皮膚と筋の間)から臓腑に至るまで、全身にくまなく分布していて、昼間は体表を25周、夜間は体内を25周しています。
いろんな大切な役割をしている衛気の作用は3つ!
①外からの刺激(外邪)から身を守る
衛気には皮膚の収縮と弛緩をする役割があって、
そのおかげでウイルスや細菌などから身を守ることが出来ます。
衛気がしっかりあれば体表が守られるので、ウイルスや細菌からも身を守れますが、
逆に衛気が少ないと、ウイルスや細菌が身体を犯しやすくなります。
②全身を温めて養う
衛気は全身を温める作用もあり、体温を一定に維持します。
③汗の調節
衛気は皮膚の収縮・弛緩の制御をすることで、汗を正常に分泌させるように働いています。
なので衛気が少なくなると、皮膚の収縮・弛緩の制御がうまくいかず、多汗・無汗などの汗の異常が現れます。
臓腑の気
臓腑の気とは、臓腑を動かす気のことです!
その臓に応じて、肝気・心気・脾気・肺気・腎気として、各臓の生理活動を発揮させています。
「気」の作用
「気」の種類によっていろんな役割をしていることを書きましたが、まとめると6つの作用があります。
それが、推動作用・温煦作用・固摂作用・防御作用・気化作用です!
①推動作用
推動作用とは、身体の成長・発育、臓腑などの生理活動を促進する作用のことです。
気は絶え間なく体内を巡っていて、その動きによって身体に活力を与えています。
その他にも、血・津液・精なども押し動かす働きがあります。
②温煦作用
温煦作用とは、身体の組織や器官を温める作用のことです。
気は熱源としても働いていて、この働きによって体温を一定に保ち、正常な生理活動を行うことができます。
③固摂作用
固摂作用とは、身体に必要な生理物質が漏れ出ないように防止する作用のことです。
例えば、血が脈外への流出・津液の過剰な排泄・精の不要な流出など。
その結果、正常に分泌・排泄などが維持されます!
④防御作用
防御作用とは、身体に外からの刺激(外邪)が入ってくるのを防ぐ作用のことです。
体表を覆って身体を守っているだけではなく、外邪が侵入してきた際も対抗する役割も担っています。
⑤気化作用
気化作用とは、生理物質の変化を引き起こす作用のことです。
新陳代謝ともいいますね!
例えば、飲食物から気、気から血・津液・精、汗や尿などの排泄物の生成など。
「気」の不調による症状は?
「気」の不調には、虚証(不足・機能減退)と実証(有余・停滞)に大きく分けられます。
また、五臓のうちどの臓で起きているかによっても症状が分けられますが、ここでは「気」の不調としてまとめて書いていきます!
主な「気」の病態として・・・
「気」の不足は、気虚・気陥。
「気」の乱れは、気鬱・気滞・気逆。
以上に分けられます。
気虚
気虚とは気の生成や供給が不足したり、かなり消耗したときに、気の量が減ってしまって、各臓腑の作用が機能しなくなった状態です。
・原因
飲食物の摂取不足によって、気を作る量が減ったとき。
慢性的な疾患、過労などによって気が消耗されたとき。
気の生成に関わる臓腑の機能が低下して、気を生成する量が減少したとき。
・症状
無力感、倦怠感
→気が不足すると全身に栄養が行き渡らないので、疲れやすく身体に力が入らなくなります。
めまい
→気が減ってしまうと、頭部まで血を運べなくなります。
息切れ、懶言(らんげん)
→肺気や宗気が不足し、呼吸や発声に影響が出ます。
※懶言(らんげん):話すことがおっくうで面倒くさい
汗をかく、風邪を引きやすい
→衛気が不足すると皮膚の収縮・弛緩の機能が低下するので、汗の調節ができなくなったり、ウイルスや細菌が入り込みやすくなります。
気陥
気陥とは、「気虚」と「気の上昇不能」という2つの状態が重なって起きるものです。
上げることができないので、内臓下垂や下痢など、下に落ちる現象が特徴になります。
・原因
慢性的な気虚症状・過労・多産・産後の不養生などで、
「気」が損傷されたことで、気の働き(上がる)に影響が出る。
・症状
気虚の症状
胃下垂・脱肛・子宮脱
→上に持ち上げる「気」の働きが弱くなるため、組織や器官を正常な位置に保つことができないため、下垂症状が起こります。
慢性的な下痢
→「脾」の機能が低下すると、飲食物の消化・吸収が十分に行われずに小腸や大腸に流れ込むため、便が緩くなります。
気鬱・気滞
気鬱とは、「気」の働きがふさがって滞り、軽度な「気」の循環障害が起こった状態のことで、
気滞は、気鬱が腸らに強くなってしまった状態のことです。
気鬱・気滞では、脹って苦しくなったり疼痛などの症状が起こり、悪化と緩解を繰り返しやすい特徴があります。
・原因
感情や情緒の浮き沈みなどが激しいとき。
邪気(発病の要因になるもの)によって「気」が滞ったとき。
・症状
脹痛(脹った痛み)
胸の痛み、胸肋部痛
→「肝」と「心」は感情や情緒などの精神活動に重要な役割を持っているので、「肝」と「心」の支配領域である胸郭や胸肋部に痛みや不快感が生じます。
腹部膨満感
→「気」の流れが悪くなり、消化器系の働きにも影響があるため。
抑うつ感
→「気」の滞りが精神面に現れたとき。
気逆
気逆とは、「気」の上昇運動が過剰になりすぎて下降運動が足りなくなることで、「気」が上逆した状態のことです。
気鬱・気滞と同じように、感情や情緒の浮き沈みが激しくなることや邪気によって起こるため、
気逆・気鬱・気滞はともに影響し合っていることが多いです。
・原因
感情や情緒の浮き沈みが激しかったりなど。
邪気によって「気」の働きが阻まれ、下降したい「気」が下降できずに行き場を失って、逆に上昇。
・症状
怒りっぽくなる
→上がりすぎた「気」が感情面に影響を及ぼして、イライラしやすくなります。
頭痛、めまい
→「気」が上がりすぎたことで、頭部に生理物質(気・血・津液など)が溜まって起こります。
咳が出る、喘息
→邪気が「肺」の気の働きに影響を与えると、呼気・吸気のバランスを保つことができなくなります。
吐きそう(悪心)、嘔吐、げっぷ、しゃっくり
→胃が正常であれば下降させますが、邪気によって「気」の働きが阻まれたり、「気」が上がりすぎたことの影響で起こります。
以上が「気」についてでした(^^)
「気」は機械で例えるなら電力みたいなもので、流れ続けるからこそ、私たちの身体は動いています。
この「気」を操作することが得意なのが、鍼灸なんですよね!
なので、身体の不調などがありましたら、鍼灸治療も選択肢に入れてみてくださいね~(^^)
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