東洋医学の「脾」とは?不調になったとき、どんな症状がある?
こんにちは、鍼灸師のトミナガです!
東洋医学での「脾」とは何か?
西洋医学でも脾臓はありますが、あまり馴染みがありませんよね。
でも、東洋医学での「脾」はかなり重要な五臓の一つなので、是非知っていただきたいと思います(^^)
東洋医学の「脾」とは?
「脾」と聞いても、「何か聞いたことあるな~」くらいで、ほとんどピンとこない方のほうが多いと思います(^^;
現在、主流となっている西洋医学でも、あまり脾臓が話題になることは少ないですしね。
とはいっても・・・
冒頭でも言いましたが、東洋医学の「脾」はかなり重要で、かつ軽視できない存在です。
もしかしたら、理由がわからないような症状が、東洋医学の「脾」に関するものかもしれません。
なのでこの機会に、ぜひ「脾」について知っていただきたいと思います(^^)
比較として、まず西洋医学での脾臓の働きは・・・
・造血(代替的)
通常、骨髄が造血を担っているが、大量に出血したなどのトラブルで骨髄が機能しなくなった場合、代替的に造血を行う機能。
・血球を破壊する
古くなった赤血球を破壊し、赤血球中のヘモグロビンから鉄を回収。
・免疫機能
細菌やウイルスの侵入から身を守るリンパ球を作っていて、全身のリンパ球の約4分の1が集まっている。
・血小板を貯蔵
傷口を防ぐ血小板を貯蔵し、必要に応じて血小板を血液中に排出する。
こう見ると西洋医学でも、かなり重要な役割をしていますが・・・
なぜか「脾臓は進化の過程でいらなくなった臓器だから摘出しても大丈夫!」と言われていましたよね。
実は、こういう重要な役割があるとはっきりわかったのは2009年頃だったそうです。
(1970年代にも、脾臓は重要なのでは?と言われていましたが、はっきり解明されていなかったんですね)
「脾」の働き
東洋医学での「脾」は、自然界に置き換えると土です!
土とされる理由としては・・・
土が水分を吸収しその中で様々なものが成長して、外に出ていくように、
「脾」も同じように水分や飲食物を吸収し、気・血・津液を全身に送るような、五臓の土台となる役割があるからですね!
また「脾」は、食べ物などから後天的に生命力を補充することから、”後天の本”とも呼ばれています。
ちなみにですが、親から受け継ぐ生命力を蓄えている”先天の本”は、「腎」です(^^)
なので「脾」と「腎」が、主に生命の基礎的機能を担っています。
そんな「脾」の生理作用は2つ!
・運化
・統血
西洋医学の脾臓とは全く異なる働きなのですが、
ざっくり言うと、飲食物を栄養に変えて「心」や「肺」に栄養を送ることで、生命活動を維持する働きをしています(^^)
運化
運化は、消化・吸収の役割をしています。
飲食物を水穀の精微(栄養)に変化させ、
またその水穀の精微(栄養)を主に「心」や「肺」に運んでいます。
その運化作用をそれぞれ、”転化”と”運輸”に分けられます(^^)
①転化:飲食物を水穀の精微(栄養)に変化させる
転化とは、飲食物を消化・吸収し、水穀の精微(栄養)に変化させることです。
消化・吸収自体は、「胃」と「小腸」が行いますが、その調節の役割をするのが「脾」の運化作用なんですね!
なので、もし「脾」が弱ってしまうと・・・
消化・吸収がうまく機能せず、食欲不振・お腹が張る・腹痛・下痢などの症状がおこります。
また、飲食物の中に含まれる水分が津液として吸収されなくなるので、
身体に余分な水分が溜まってしまい、痰湿(むくみなど)となります。
そのまま余分な水分が「大腸」や「小腸」に流れていくと、軟便・下痢が起こるようになります。
②運輸:水穀の精微(栄養)を「心」や「肺」に運ぶ
運輸は、水穀の精微(栄養)を「心」や「肺」に運ぶことです。
運ばれていった水穀の精微(栄養)は、気・血・津液となって全身を巡り、全身の生命活動を維持しています(^^)
もし「脾」が弱り、運輸がうまく機能しなければ、気・血・津液が十分に作られなくなってしまいます。
気が少なくなれば、息切れ・倦怠感などが起こり、
血が少なくなれば、めまい・不眠などが起こるようになります。
「脾」の運化作用を支える昇清作用
「脾」の特徴として、昇清というものがあります。
昇清の「清」とは水穀の精微のことで、この昇清が正しく機能することで、各組織・器官に栄養が行き渡るようになります。
また、組織・器官などを正常な位置に保つ役割があるので、
もし、昇清の機能が弱ってしまうと、内臓下垂・慢性の下痢などが起こるようになります。
統血
気の固摂作用によって、血が血脈中から漏れ出るのを防いでいますが、それを監督する役割をしています。
「脾」が弱ってしまうと、気の固摂作用が低下し、脈中から血が漏れ出やすくなるので、血便・血尿・皮下出血などが起こります。
「脾」と関連が深いもの
東洋医学には二千年以上の歴史があるので、数えきれないほどの治療家たちの経験・臨床結果があります。
そこから生み出されたものが、五行色体表です。
自然界から人体の部位や働き、病気の原因・病理・病証などを五臓(肝・心・脾・肺・腎)にそれぞれ分類したものです。
その五行色体表で、「脾」に分類されているものが、以下です(^^)
※今回は太字になっているところだけを解説していきます。
五臓 | 五腑 | 五行 | 五季 | 五竅 | 五主 | 五液 | 五華 | 五精 | 五悪 | 五労 | 五色 | 五志 | 五動 | 五病 | 五香 | 五味 | 五声 | 五穀 | 五畜 | 五菜 | 五果 |
脾 | 胃 | 土 | 土用 | 口 | 肌肉 | 涎 | 唇 | 意 | 湿 | 座 | 黄 | 思 | ※噦 | ※呑 | 香 | 甘 | 歌 | 粟 | 牛 | 葵 | ※棗 |
※噦(えつ):しゃっくり
※呑:つばを飲み込む
※棗(なつめ)
「脾」と関連の深い身体の部位
「脾」と関連が深い体の部位は「口・涎・肌肉・唇」。
「脾」が弱っていると反応が現れやすい部位です!
①口・涎
口は「脾」への入り口で、
涎(よだれ)は口腔内を潤し、飲食物から水穀の精微(栄養)を取りだすために必要な消化液の分泌を促す役割があります。
もし「脾」が弱ってしまうと、
口腔内を十分に潤すことが出来ず、味覚が鈍くなったり、口が乾燥するなどといった症状が起こります。
また、正常なとき「脾」は「胃」の熱を抑えていますが、それも弱ってしまうと口腔内に「胃」の熱を帯びることがあります。
そのときは、口内炎・歯肉炎・喉が異常に乾くなどの症状が起こります。
②肌肉・唇
肌肉は、皮ふと筋肉の間のことですね!
唇も肌肉の範疇だとされています。
「脾」は気血をつくる源でもあるので、「脾」が弱ってしまうと、気血で養われている肌肉や四肢に影響があり、
四肢の脱力感、急に痩せたり、力がなくなる、肌ツヤが悪い、などという症状が起こります。
唇の場合は乾燥したりと変化が現れるようになります。
「脾」と関連が深い精神・感情
「脾」と関連が深い精神は、意。
「脾」と関連が深い感情は、思。
①意
意とは、思考・推測・注意力・記憶などの精神活動を表していて、
何かをつくり出そうと、アイデアを生み出す働きをしています。
なので「脾」が弱ると、思考がまとまらないなどの症状が起こります。
②思
思う・考える行動は、気の働きを停滞させる特徴があります。
思慮が過剰になると、「脾」の気の働きが悪くなって、食欲不振や意欲の低下などが起こります。
「脾」が不調になったときに好む味
「脾」が不調になったときに欲しくなる味は、甘。
甘味には、補う・調和させる・ゆるめる、という作用があります(^^)
甘味は「脾」を養い、精気を補うとされているので、適度に摂取することで「脾」と「胃」の働きを調節することができます。
甘味といっても、お菓子やジュースなどの人口甘味料が入ったものではなく・・・
白ご飯、イモ類、豆類、果物というような自然食品のことですね!
しかし、甘味を摂りすぎてしまうと・・・
ねっとりとした性質によって、運化作用に負担がかかってしまうので、逆に「脾」を弱らせてしまいます。
また、肌肉がゆるみすぎて、生理的な緊張を維持できなくなります。
「脾」が不調になったときの症状(病証)は?
東洋医学において、「脾」にまつわる病証でよくあるのは・・・
・脾気虚
・脾陽虚
・脾虚湿盛(ひきょしっせい)
以上のものです(^^)
脾気虚
「脾」の機能が減退したもので、主に運化作用が弱っている状態として現れます。
・症状
食欲不振、腹部膨満、また水分を運化作用で運べず、泥状便になります。
「脾」の気が不足し倦怠感で力が出なかったり、痩せたり、息切れを起こしたりもします。
他にも、血尿(統血作用の低下)、慢性胃腸炎、顔がくすみ黄色がかる、むくみ、など。
・原因
過労や暴飲暴食によって、「脾」の気を消耗し、消化や水分の代謝障害を引き起こしたもの、
過度に思考をしたことで「脾」を弱らせてしまい、「脾」の気の動きが悪くなったものなど。
脾陽虚
脾気虚がさらに悪化したもので、虚寒症状(陽気が足りず冷えた状態)が出ます。
・症状
潰瘍や腫瘍、手足が冷える、腹部の痛み(温めると緩和)、顔面蒼白、下痢、浮腫、鼓脹(腸にガスが溜まった状態)など。
・原因
暴飲暴食、生ものや冷たいものの食べ過ぎ、長期間の下痢、適切でない性生活など。
脾虚湿盛(ひきょしっせい)
運化作用が低下することで、水分が溜まって痰湿になり、その痰湿が「脾」と「胃」に停滞して起こります。
・症状
運化作用が低下するので、食欲不振、大便が未消化なものを含み水っぽくなる、お腹がふくれる。
また、水分がうまく運べないので、むくんだり、お腹につっかかりがある感じがする、
口が渇いてるけど水分は欲しくないという症状が現れます。
・原因
生もの・冷たい物・脂っこい物・酒などの過度な飲食によって引き起こされることが多いです。
また「脾」が弱ると、湿気にも影響を受けやすくなるので、雨の日や湿気の多いところで、この症状が誘発されることがあります。
東洋医学において「脾」は、飲食物を消化・吸収を手助けする役割があります。
なので、気・血・津液の源とも言われているんですね(^^)
今まで原因がわからなかった症状が、もしかしたら「脾」に関係するものかもしれませんので、
もしよろしければ参考にしてみてください!
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