【自律神経編】鍼灸治療の効果とは?体に及ぼすメカニズムを解説します!

自律神経とは、その名の通り「自律」して動いている神経です。

私たちが意識して動かせるものではないため、自律神経の乱れで悩まれる方は少なくありません。

鍼灸治療に興味を持つきっかけになった方もおられると思います。

では、鍼灸は自律神経にどう影響をもたらすのでしょうか?

つまり・・・

動悸が激しいとき(交感神経↑)の場合は交感神経を鎮めますし、

倦怠感(副交感神経↑)の場合は副交感神経を鎮めます。

ホメオスタシス(生体の恒常性)の維持の手助けになるのですが、これが東洋医学でいう中庸ですね!

鍼灸治療が自律神経に作用するメカニズムが科学的に証明されたキッカケとなったのが、

生理学者の佐藤昭夫氏とシュミット氏が「体性-自律神経反射」についての論文を発表されたことでした。

「体性-自律神経反射」を簡単に説明すると、

例えば・・・

腹部への鍼刺激は、交感神経を興奮させ胃機能の抑制する、

四肢への鍼刺激は、副交感神経を興奮させ胃機能を亢進するということ。

この発見によって、鍼灸治療や手技療法のメカニズムが飛躍的に発展していきました。

もちろん、どこでも鍼灸刺激を加えればいいというものではなく、その人の体質に合ったツボの選定は正確に行わないといけません。

なので、自律神経を整えるために鍼灸治療を希望されている場合は、できれば鍼灸院など専門でされている治療院が良いですね^^

では、ここからはもう少しメカニズムに関して触れていきたいと思います。

目次

まずは簡単に自律神経についておさらい!

自律神経とは、

・交感神経系(胸髄と腰髄から出る)

副交感神経系(脳幹と仙髄から出る)

この2つの通り道で構成されています。

と、状況に合わせて役割を果たしています。

といっても、どちらともがバランスを取って生体は機能しているので、どちらかが完全に停止するということはありません。

よく例えられるのは、車のアクセルとブレーキですね。

車を運転するとき、アクセルを踏みっぱなしではなくブレーキもうまく使い分けますよね。

心臓も交感神経と副交感神経がうまくバランスを取って、場面場面でよく動いたり鎮まったりします。

これを二重支配といいます。

・二重支配を受ける器官

→眼・唾液腺・心臓・肺、気管・肝臓・膀胱・胃腸・膵臓

一方では、交感神経のみ、または副交感神経のみに支配される器官もあります。

・交感神経のみ

→副腎髄質・腎臓・脾臓・汗腺・立毛筋・骨格筋・大部分の血管

・副交感神経のみ

→一部の血管

このように自律神経は、活動するとき休息をとるとき、そのときの状況に合わせてあらゆる臓器・器官を調整してくれています。

しかし、現代では自律神経の乱れによって悩まれる方がかなり多くいらっしゃいます。

心配事や不安がつきない現代社会、自律神経が乱れるのも不思議なことではありません。

ストレスで自律神経はどう乱れるのか?

次は、ストレスと自律神経の因果関係について見ていこうと思います。

鍼灸と何の関係があるのか?と不思議に思われるかもしれませんが、

これがあらゆる研究でわかってきていますので、

まずはストレスがどういう風に自律神経に影響を与えるのか?

そのメカニズムを見ていきたいと思います^^

特に自律神経の乱れで悩まれている方は、ご自身の体内で何が起きているのかを客観的に知ることもできますよ。

ストレスに対応する自律神経とホルモン

そもそも自律神経は、ストレスに対応できる体にするために働きます。

その経路は2つあります。

体がストレスを感じたとき・・・

「視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)」

「視床下部-交感神経-副腎髄質系(SAM軸)」

この2つの系が働いて、ストレスに対抗するために体を調節します。

視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)

この系が働くと・・・

・血糖値の上昇

・リンパ組織(免疫に関する)の萎縮

・抗炎症

・抗アレルギー

・胃酸分泌促進

・胃粘液分泌抑制

といった生体反応を受けます。

これらの反応は最終的に分泌される、副腎皮質ステロイド(コルチゾール)というホルモンによるものです。

視床下部-交感神経-副腎髄質系(SAM軸)

この系が働くと・・・

・血糖値上昇

・血圧上昇

・覚醒作用

といった生体反応を受けます。

これらの反応はカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)というホルモンによるものです。

つまりストレスを受けると、この2つの系が働いて・・・

血圧や心拍数を上げ、瞳孔はひらき、汗をかき、筋肉を増強させ、抗炎症作用でショック状態になるのを防ぎ、胃酸を増やして少しでも体を軽くする。

敵(ストレス)と戦う、もしくは逃げるための生体反応ですね。

※勝てない・逃げられない(諦める)と悟ったときは、逆に副交感神経が優位となり、失禁・硬直が生じます。

これが一時的なものでしたら、ちゃんと自律神経のバランスは元に戻ります。

しかし、長期にわたる慢性的なストレスは体も想定していないようです(^^;)

特に心理的なストレス。

通常であれば、副腎皮質ステロイド(コルチゾール)の分泌はサーカディアンリズム(体内時計のようなもの)によって抑制されるのですが、

つまり、ずっと血糖値・血圧・心拍数などが上がってしまうんですね・・・。

これが自律神経を乱れさせる原因です。

鍼灸は自律神経を乱れを調整する!

自律神経が乱れてしまうのは、

「視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)」

「視床下部-交感神経-副腎髄質系(SAM軸)」

この2つの系がストレスに対処しようと頑張ってくれている結果という話でしたね。

これは鍼灸刺激によって、系の起点となる視床下部の神経に作用するからだと明らかになっています。

それにより2つの系は正常を取り戻し、過剰なホルモンの分泌はしなくなります。

このメカニズムによって、自律神経にまつわる疾患が鍼灸治療によって改善されるということです^^


以上が、鍼灸治療が自律神経に対して及ぼす影響でした!

東洋医学の五臓でいうと、「肺」や「肝」が自律神経とかかわりが深くてですね、

「肝」のツボをメインに治療するとイライラが収まったり、

「肺」のツボをメインに治療するとアレルギー疾患が改善したり・・・

現代の研究者のおかげでメカニズムがどんどん判明してきていますが、昔の人が培ってきた経験の蓄積ってほんとにすごいですよね。

伝統的な東洋医学、現代のメカニズム。

両方とも大切にして治療をさせていただいております。

もし鍼灸治療をご希望の方は、ご予約・ご相談フォームから承っていますので、よろしくお願いします^^

参考文献:

山本高穂,大野智:東洋医学はなぜ効くのか?

矢野忠,川喜多健司:鍼灸臨床最新科学殻-メカニズムとエビデンス

熊澤孝朗,西條一止:鍼灸臨床の科学

斎藤紀先:休み時間の免疫学(第3版)

鈴木郁子:やさしい自律神経生理学 命を支える仕組み

【この記事を書いた人】

大阪訪問鍼灸師(旭はりきゅう)

・鍼灸師歴10年

・漢方養生指導士

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